シンドラーエレベーター

世の中には色々な商売のしかたというのが存在する。
車や飛行機のエンジンの様にいかにも整備に費用のかかるモノの場合は少々価格が高くてもその整備費用を製造もとが負担する場合がある。有名なところでいうと、ロールスロイスである。ロールスロイスの車は壊れないという伝説を作り上げ守るためにロールスロイス社はありとあらゆる手段を講じる。それが如何にコストのかかるものであっても遂行する。ときには恐るべきコストすらかけるという。壊れれば自社の負担になる。このことによってロールスロイスはその製品の質を全社をあげて上げなければならなくなった。
かたや、製品の値段を下げてその後の整備費用や買い替えの代金を徴収するタイプのビジネスも存在する。これはソニーの携帯音楽プレーヤーなんかのビジネスが有名である。ある程度の使用頻度以上使うと消耗部品が破損する。修理するには結構な金額がかかる。そのコストと新しい製品を買った場合のコストを比べると消費者は新しい製品を購入したほうがお買い得なので新しい製品を購入する。次もソニー製品を買ってもらわねばならないソニーはいつも魅力的な製品を作りつづけなければならない。ソニーの製品はいつでも挑戦的だ。その挑戦がいつも成功しているとは限らないが、ソニー製品はいつも挑戦的でわれら消費者の購買意欲をそそる魅力的な製品だ。
ソニーロールスロイスは極端な例である。が、しかし、二つのビジネスモデルを語るにはこれしか例を思いつかなかった。同列に並べるべき会社ではないがあえて二社を列挙した。ともに成功者に列挙されるべき輝かしい企業である。あくまで、商売の根本をわかりやすくするために書いたのだ。
さて、話題のシンドラー社のエレベーターである。このところの報道を見る限りシンドラー社というのはどちらかというとソニーよりのビジネススタイルの会社のようだ。製品はやすく提供しその後のメンテナンス費用によってより長い付き合いとお互いの信頼で商売を築いてきたのだろうと思われる。少なくともドイツのシンドラー本社のコメントからはそれをうかがえる。ソニーよりとは言っても買い替え前提ではなくその後のメンテナンスを自社で受け持つことを前提としたやりかた、というのがソニーと大きく異なる点であると思われる。
製品がたやすく買い替えられるものではない、メンテナンスの費用の額を考えるとメルセデス社のビジネスに近いのかもしれない。ちなみに日本でメルセデスの車を買うとディーラーの手厚いサービスを受けることを半ば義務付けられる。また、保険もセットで購入することによってメルセデスの車はかなり良質なアフターサービスを受けられる。こういったことがセットになってメルセデスは高品質な車として信頼を得た。
シンドラー社はメンテナンスについて日本で如何様なプロモーションをしてきたのだろう。メンテナンスを他社に委託することのリスクについて何も語られていないのならば、今メディアで行われているシンドラー社叩きについては理解できる。しかしもし、シンドラー社がメンテナンスを他社に委託した場合にはシンドラー社がそのエレベーターの安全性を保証しかねるということを明確にしていた場合は話は別だ。これはメンテナンスを他社に任せてしまった消費者の側に大きな問題があることになる。
製品というのは正しく使い、正しくメンテナンスをされて始めてその性能を発揮する。誤った使いかたを続け、誤ったメンテナンスを続けていればその寿命は極端に短くなる。エレベーターだって同じだ。ものにはときに作った本人たちにしかわらないメンテナンスのツボが存在したりもする。現に停止すべき階で正しく停止していなかったシンドラー社製エレベーターは正しく設置すらもされていなかった可能性だってある。設置費用が高いからと無理矢理他社にその設置を委託していた可能性だってあるのだ。設置というのは正しい調整も含めた設置である。ただ、取り付ければいいものではない。
エレベーターをやすく買い、その後のメンテナンスの費用が高いからとやすく請け負う他社にそのメンテナンスを任せていた場合は事故が起こっても当然と考えるべきかもしれない。
もっと残酷ないい方をするならば、お金をケチして高校生を一人死なせた可能性があることを忘れてはいけないということだ。
重要な責任の所在がメンテナンスを他社任せにしていたおかげでまるで不明瞭になっている。だれがこんなことをしたのだろうか。これじゃ、まるで事故が起こることを前提に誰かが責任の所在をあらかじめ不明瞭にしていた様にも見える。
メディアの報道には片手落ちがあると思う。ま、人間のすることだからしょうがない。そういうことはいつだって起きるのだ。ただし、冷静でいられる諸君はメディアに同調してヒステリックにならないでほしい。ここは冷静に誰がエレベーターのメンテナンスをシンドラー社以外に委託したのかについても慎重に考えるべきである。
また、エレベーター本体の価格がやすくメンテナンス費用が高いなら。それはシンドラー社がメンテナンスの費用で会社を運営していたということである。そこを払ってこそ、お互いの利益になるのではなかろうか? 
もちつもたれつというのは日本人の信条で、お互いに助け合うという古き良き伝統であると思われる。エレベーターだけやすく買って売り手の利益につながるメンテナンスを他社に投げていたとすれば、これは全くもって持たず、持たせず。半ば泥棒のような行為である。
もし、わたしの推測が正しく、エレベーターをやすく買ってメンテナンスを他社に委託して全てをやすく済ませていたとすれば、シンドラー社にしてみてもズルイ買い方をした消費者が自分のところの愛する製品を壊して挙句のはて人を一人殺したに過ぎないと思っているかもしれない。起こるべきことが当然の様にして起こっただけだと思っているかもしれない。
ちなみにわたしは、かの高校生を殺してしまったのは泥棒魂に懲り固まったエレベーターを設置した誰かなのではないかと思っている。耐震強度偽装問題と同一の性質の問題なのではないかと思っているのである。シンドラー社魔女裁判にかけられているだけだ。
最後に、これだけ会社の名前を書いたのである。シンドラー社の日本人社員、もしくは日本語のわかるスタッフの目にもこの記事が止まるかもしれない。忠告しておきたい。今のやりかたでは、シンドラー社は日本で魔女にされる。そして、日本人は敗者にはあまり温情的ではない。日本から撤退せざるをえなくなってしまう。さらにその評判が国際的に広がってしまう可能性もあるのだ。日本での振るまいは日本人にならうべきである。さらにいうなれば、ヨーロッパ人には理解不能な組織が存在しお互いを守っていたりもする。その組織というのがヨーロッパでも社会的組織として認識されているとは限らない。もっと警戒すべきである。ともかく、今のシンドラー社の日本メディア対策は甘すぎる。ありとあらゆる可能性を想定し、事実をもっと公に発表しなければ負けを見るのは必至だ。
ま、余計なお世話かもしれないが、ここはわたしの思ったことを書き記しておくメモのようなブログである。好き勝手に書かせてもらった。